記事や本を読んでもすぐに内容を忘れてしまう。Web Clipして読んだ記事を覚えた気になってしまう。忘れた内容を再度読み返したり、線を引いて理解した気になる。
「TAKE NOTES!――メモで、あなただけのアウトプットが自然にできるようになる」の著者ズーク・アーレンスもこれらは全く意味のない行為であると指摘しています。
これらのよくありがちで間違った読書の仕方、情報の整理方法を効率的に運用することができるのがZettelkastenというノート術です。
Zettelkastenのような生産性システムを人生の早期に確立することは長期的な目線で圧倒的なメリットをもたらすことと思います。
また以下記事で2022年に読んだ本TOP10を紹介しています。よかったらご覧ください。
zettelkastenとは?
20世紀ドイツの社会学者ニクラス・ルーマンが研究と論文執筆のために考案したと言われている知的生産システムです。
彼は70冊の本を出版し、500の研究論文を発表するなど多くの面で成功を収めましたが、その多くはZettelkastenのおかげであると考えています。
「Zettel」がメモを「kasten」が箱という意味を表しており、一つのアイデアを一つのメモに短く記し、それを順番ごとに分けた箱で管理するというのが大きな特徴です。
従来のノート術とは異なり、知識を繋げることにフォーカスした画期的なノート術として最近になってビジネスマンや執筆をする方々の間で話題になっています。
以下の動画は非常にわかりやすくZettelkastenを説明しています。英語ではありますが、イラスト中心なので概要を掴むには十分なはずです。
zettelkastenを運用する上で得られるメリット
ということが従来のノート術に比べて明らかにメリットと言える点でしょう。
多くの人が何かを整理する時にはカテゴリーやジャンルで分けてしまいます。しかし知識に関してこの方法で整理するのは間違ったやり方です。
人間の脳の構造はネットワーク形式であると言われており、一見全く関係のない知識同士を繋げる力があります。
しかしながら一般的なカテゴリー形式などで知識を整理しようとすると、違うカテゴリー同士を繋げる力がなくなり、単一的な知識に留まり、独創的なアイデアを作り出せなくなります。
「自分との対話を続け、自分自身を驚かせるようなアイデアを引き出すことのできる、研究上の独立した思考パートナーだと考えるようになった。」と言っているようにまさにルーマンにとってzettelkastenは第二の脳として機能してくれていたわけです。
また、現代のZettelkastenとして新たに「エバーグリーンノート」というものが提唱されています。気になる方は以下記事もご覧ください。
zettelkastenのルール
以下が基本的なZettelkastenの12のルールです。
- カード1枚につき1アイデアのみ
→ カードはできるだけ簡潔に作成する - カード1枚で内容を完結
- 全てのカードは必ず他のカードとリンクさせる
→ 各カードは、リンクされたネットワークから知識を導き出す要素にすぎず、ネットワークにリンクされていないカードは忘れ去られてしまう - カードの繋がりが何を意味するのか説明する
- 自分の言葉でカードを書く(コピペしない)
→ 自分自身の言葉で書くことで理解が深まる - 参考文献を残しておく
→ 盗作を防いで後で詳細な資料にいつでも戻れるようにしておく - 自分の考えを加える
- 構造を気にしない
- 接続カードを追加する
→ カード同士の繋がりを説明するカードのこと - アウトラインカードを追加する
→ 他のカードへのリンクをまとめたカードのこと。詳しくはMOCの記事で - カードを削除しない
→ 内容が間違っていたとしてもカードを削除しない。代わりにどのように間違っていたかを記すカードを新しく作る。これによってどのように自分の思考が変遷していったのか理解することができる。 - 恐れずにカードを追加する
参考: 効率的なノートを作成できるドイツの社会学者が生み出した方法「Zettelkasten」とは?
zettelkastenで使うノートの種類
Zettelkastenでは効率的にシステムを運用するために目的によってノートを分けています。
Fleeting Note(一時的なノート)
思いついたことをとりあえず忘れないように保存していくためのメモであるため、ノートのフォーマットや書き方は適当でOKです。
適当なメモ書きであるため、個人的にFleeting Noteについては専用のフォルダーを作って管理すべきだと思います。
必要だと思ったFleeting Noteは清書してZettelkastenのリンクの一部として加えましょう。
Literature Note(文献ノート)
読んだ記事や本、観た動画などインプットしたもののメモについてはこちらのLiterature Noteに書きます。
Literature Noteには明確な出典があるわけなのでこのノート専用のフォーマットを作り、参考文献として残しておく必要があるということです。
またLiterature Noteを作る際に忘れてはいけないのがルール5. 自分の言葉でカードを書くです。
自分でしっかり理解するために読んだ部分をそのままコピペしないで自分の言葉で説明し直すことが大切です。
Permanent Note(永久保存版ノート)
様々な文献を参考にし、自分なりにまとめたものや考え入れ、世に公表できるぐらいに練り上げたノートがPermanent Noteです。
Evergreen Noteの提唱者Andy Matuschakによると
もし知的労働者として優れているという指標を一つ定めなければならないとしたら、それは「一日いくつのEvergreen note(Permanent Note)を生み出せているか」が私が知る最も良い指標である。
参考: Evergreen note-writing as fundamental unit of knowledge work
らしいです。
様々なLiterature Noteを参考に、自分独自の考えや洞察を作り上げましょう。
Structure Note(構造ノート)
Structure Noteは複数のPermanent Noteのリンクを含んでいる目次のようなノートです。
Permanent Noteを複数まとめてStructure Noteにすることでさらに大きな概念を表現することが可能になります。
例えるならPermanent Noteが見出しでStructure Noteが目次(本)といった感じですかね。
基本的にZettelkastenではPermanent NoteとStructure Noteを組み合わせたものを蓄積していくことでアイデアを生み出す第二の脳として育てていきます。
zettelkastenを運用するアプリ
Roam Research
2019年リリースのRoam Research。評価額が2億ドルに達し、ストライプのコリソン兄弟も出資した注目のスタートアップです。ツイッターのハッシュタグで #Roamcult、 #Roam部 などで検索するとユーザーの熱狂具合がわかります。
また、先ほど紹介した知的生産系YoutuberのShu OmiさんもRoam Researchを使用して、Zettelkastenを行なっています。
Roam Researchは『ネットワーク化された思考のためのノート・ティキング・ツール』と紹介されており、ノート間のリンクを繋げて洞察を得ることへ特化しています。
それに加えて、アウトライナー的なリスト形式で書いていくことも可能です。
ただのノートアプリではなく、「第二の脳」アプリとして今一番注目を浴びているサービスであると言えます。
大きな欠点として挙げられるのが価格です。
- 月額プラン:$15(年間、$180)
- 年間プラン:$165(月額、$13.75)
- 5年プラン:$500(月額、$8.33)
と無料プランがありません。これはちょっときついですね。
Obsidian
個人的に自分も利用しているサービスであるObsidian。Zettelkastenで検索するとサジェッションでObsidianと出てくるほど関連性が強いアプリ。
特徴的な点はローカルに保存するタイプのデスクトップアプリで、ユーザー登録は不要というところ。
インストール型のアプリなため、動作が軽く、クラウドに保存もしないためセキュリティの不安も皆無です。
また、Roam Researchと同じくノート間のリンクから洞察を繋げることに長けており、「第二の脳」アプリとしてRoam Researchの対抗馬となる存在。
さらに様々なプラグインが有志の開発者によって提供され、日々進化しているのも特徴です。自由にカスタマイズできるのでエンジニアやプログラミングができる人が多く使っているイメージです。
そしてObsidianは基本的に全て無料。Redditのコミュニティも盛り上がっており、個人的に今後ZettelkastenやPKM(Personal Knowledge Management)がさらに流行れば、一番人気になるアプリなのではないかと予想しています。
Obsidianで日記を運用する際の記事を書いたのでよかったらあわせてご覧ください。
また、以下の書籍はObsidianの初期設定をする上で非常に役に立ちました。一読をおすすめします。
Scrapbox
Nota株式会社が開発している唯一の日本製アプリであるScrapbox。
Scrapboxはノート間のリンクを重視し、「第二の脳」アプリとして上記二つのサービスより長く、ユーザーに使われてきたサービスです。
日本製のアプリであるため、日本語に対応しており、個人利用であれば無料で利用できます。
デメリットとして、スマホアプリがない点や独自の記法で見出しをマークアップしなければいけない点などやや利用する際に気になる点があるのも事実です。
ただ、日本製であることや上記二つに比べて歴史が長いこともあってScrapbox情報整理術のような体系化された書籍も出版されているので利用するにあたって参考にできる情報は多い印象です。
Logseq
オープンソースのRoam Researchのようなアプリ。
機能はほとんどRoam Researchで、Obsidianと同じくローカルに保存されるのが特徴です。
まだベータ版ということもあって、本格利用は避けた方が無難ですが、Roam Researchと違って無料で使える点が大きく、「第二の脳」として今後注目のアプリと言えそうです。
Logseq公式: https://logseq.com/
Zettelkastenを知るための本
日本で唯一のZettelkastenをテーマに書かれている本です。
この記事と紹介した動画、参考文献を読めばほとんどZettelkastenについては理解できると思いますが、本質的な部分が多く記載されているので実際に本格的にZettelkastenを導入したいと思った方はさらっと読んでおくと良いかと思います。
参考文献
- 効率的なノートを作成できるドイツの社会学者が生み出した方法「Zettelkasten」とは?
- Zettelkasten(ツェッテルカステン)で使うノートの種類と構成まとめ
- 効率的に成長するためのデジタルノート術(Obsidian x Zettelkasten(LYT Framework)
- Zettelkasten Note-Taking Method: Simply Explained
- 「ノートアプリ」、「第2の脳」として人気のRoam Researchが 評価額2億ドルで900万ドルの調達〜コロナ禍で人気の生産性向上ツール
- TAKE NOTES!――メモで、あなただけのアウトプットが自然にできるようになる
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