「読書について」 ショーペンハウアー【要約】 | 本の読み方の極意

読書について【要約】 - ショーペンハウアー
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このブログでは今後、数多くの本を紹介していくつもりなのですが、そもそも、良い本、良い読書とはどのようなことなのか。

ドイツの哲学者ショーペンハウアーの「読書について」は、その根本的な技法である「本の選び方」や「読んだ本を活かす方法」など読書家だからこそ知っておきたい「読書の極意」が詰め込まれた読書家のための古典となっています。

目次

読書についての構成

ショーペンハウアーの代表作である主著「意志と表象としての世界」の注釈として書かれた「余録と補遺」。

彼の入門書として最適であると言われていますが、その「余録と補遺」の中から

  1. 自分の頭で考える
  2. 著述と文体について
  3. 読書について

の三編をまとめたものが「読書について」です。

今回は特に本を読む上で個人的に重要だと感じた「1. 自分の頭で考える」と「3. 読書について」の二つの章を軸にまとめていきます。

本の選び方

ショーペンハウアーが述べていた本の選び方で重要なポイントは以下の3つです。

  1. 時代に精査された古典を読む代わりに新書だけを読めば、考え方が現代の狭い世界にとどまってしまう
  2. 悪書は時間と金と注意力を奪い取る
  3. 本を選ぶ上で最も大事なことは読まなくて良い本を読まずに済むこと

すなわち悪書は読者から、本来なら良書とその高尚な目的に向けられるべき時間と金と注意力をうばいとる。また悪書はお金めあて、官職ほしさに書かれたものにすぎない。したがって役に立たないばかりか、積極的に害をなす。今日の著書の九割は、読者のポケットから手品のように数ターレル引き出すことだけがねらいで、そのために著者と出版社と批評家は固く手を結んでいる。

読書について – ショーペンハウアー

新書は悪、悪書は読むべきではないと言われていますが、さすがに新書全てが悪書だとは限らないようです。

ではどういった要素が悪書を悪書たらしめるのでしょうか。

質の低い文章

金を稼ぐことを目的にした瞬間にその文章は質が低い文章であるとショーペンハウアーは言います。

名誉と金はトレードオフの関係にあり、どちらかを重視すればどちらかが欠けるとのこと。

マルクスの「資本論」を例に出すと、彼は家族、健康、安全、お金など自分の人生全てを犠牲にして資本論を書き上げました。

その後の「資本論」の名声や影響力はスターリンや毛沢東の歴史を見れば明らかです。(マルクスが意図した使われ方ではなかったのですが…)

どんな作家でも、かせぐために書きはじめたとたん、質が下がる。偉大なる人々の最高傑作はいずれも、無報酬か、ごくわずかな報酬で書かねばならなかった時代の作品だ。この場合でも、スペインのことわざ「名誉と金は、ひとつの袋におさまらない」は正しいことがわかる。

読書について – ショーペンハウアー

質の高い文章

対して質の高い文章とは何か。以下の二通りに分けられると述べられています。

  1. その人にしか提供できない素材を取り上げる
  2. 誰もが知っている素材を個人の表現形式で発信する
    思索者がそれについて「どう考えたのか」など。これは傑出した頭脳の持ち主だけが価値のあるものを作ることができる。

1. その人にしか提供できない素材を取り上げるについては海外情報やニッチな分野の研究、個人の体験レポート、多くの資料を独自の切り口でまとめた歴史の情報などその人だからこそ得られる情報を書くことで重要な本として発表できると言います。

2. 誰もが知っている素材を個人の表現形式で発信するについては誰でもよく知っているもの、例えば書籍や映画、商品のレビューなどは執筆者がそれについて「どう考えたのか」などを書くことで発表します。

ただし、この表現形式の場合は執筆者が「傑出した頭脳の持ち主」である必要があり、凡人がいくら頭の中を活字化してもその程度のことなら誰もが既に頭の中に持っているのだと言います。

自分で考える力を養う方法

読書をする一番の目的は知識をつけ、自分の考えを発展させ、それを活かすことでしょう。

ショーペンハウアーが本書で最も強く伝えていたのが「自分で考える人になれ」ということでした。

そんな自分で考える力を養う方法を「読書について」を読む中で個人的に以下の4つのステップに分けました。

  1. 自説を立てる
  2. 本を読む
  3. 自説を本から集めた多方面の知識から判断する
  4. 本を読む前より自説をより深く進んだ考えに発展させる

この発展させた考えだけが、真に私たちが知ることができるものであると語っています。

誰だって判断するより、むしろ信じたい

自分で考えることをせず、他人に判断を委ねて行動する人がこの世の大半であるとショーペンハウアーは言います。

なぜなら、他人に判断を委ねるのは楽だから。

大抵の人というのは主体性を持たず、自分が何をしたいかを考えずにただ時間を消費しています。

ローマのストア派哲学者であるセネカも「人生の短さについて」でそういった人は生きているとはいえず、たんに時が過ぎているだけだということを述べています。

自分が何をしたいかがわからないから、したくもない仕事をして不満を述べながら、自分の人生に責任を持たずに、全てを他人のせいにして人生を終えてしまうのでしょう。

議論の余地ある問題に権威ある説を引用して、躍起になって性急に決着をつけようとする人々は、自分の理解力や洞察の代わりに、他人のものを動員できるとなると、心底よろこぶ。かれらにはそもそも理解力や洞察が欠けている。こうした人々は無数にいる。

読書について – ショーペンハウアー

テレビとSNSに毒された現代人

ショーペンハウアーは本を読み過ぎることも毒になると本書で述べていますが、現代人は本ですらなく、SNSやテレビというさらに悪い情報を大量に摂取しています。

SNSではインフルエンサーが商売のため、テレビでは政府や企業の宣伝のために放送されているため、自分で考える力が身につかなくなるのは当然のことでしょう。

つまりショーペンハウアーに言わせれば、世の中のほとんどの人は本当に知っていることは何もないということになります。

理解力の証

「自分で考え、真に物事を自分の知識とするためにはその物事とかけ離れたものから同質性を見抜くこと。」
と語っており、これこそが理解力の証になるのだそうです。

思考法系の書籍で有名な細谷功さん著『アナロジー思考』でもあるテーマと遠ければ遠いほど素晴らしいアイデアになると言っているように「同質性を見抜き、離れた事象をつなげる本当の理解力」というのは現代になっても非常に高度な思考技術なんでしょう。

他人に自分の考え方を説明する際にどれだけわかりやすく、その人が知っている事柄で説明できるかを試してみるのが良い方法になると思います。

比喩は 認識の強力な推進力 となる。だからこそ意外性に富み、しかもぴったりの比喩を駆使できれば、深い理解力のあかしとなる。アリストテレスも言っている。「ずばぬけて偉大なのは、比喩を見出すことだ。言い換えれば、これだけは他人から学べるものではなく、天賦の才のしるしだ。すぐれた比喩を駆使するには、同質性を見抜かねばならないからだ」(『詩学』)。また、こうも言っている。「哲学でも、遠くかけ離れたものに同質性を見出せるのは、鋭い洞察力のあかしである」

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世の中にいる4種類の人間

ショーペンハウアーは「読書について」の中で世の中の人間を明確に以下の4種類に分けています。

  1. 行動力のある人(本を読まない)
  2. 思想家(本を大量に読む)
  3. 物知り(本を大量に読む)
  4. 凡人(悪書のみを読む人)

ここの分類においても本を読んでも読まなくても、自分で考える人を目指すよう提言しています。

行動力のある人(本を読まない)

本を読まなくても自分の経験から自説を構築していけば、自分で考える人になれるとここでは述べています。

良識や正しい判断、場をわきまえた実際的行動の点で、学のない多くの人のほうがすぐれている。学のない人は、経験や会話、わずかな読書によって外から得たささやかな知識を、自分の考えの支配下において吸収する。

読書について – ショーペンハウアー

思想家(本を大量に読む)

ショーペンハウアーが目指すべき人間に挙げているのがこの思想家。

思想家は軸となる考えと知識を持ち、それに対して読んだ本、得た知識をどんどん関連付け、さらに深く大きくしていきます。

思想家はたくさん知識が必要なので、たくさん読まねばならないが、精神がはなはだ強靭なので、そのすべてを克服し、吸収し、自分の思想体系に同化させ、有機的に関連づけた全体を、ますます増大する壮大な洞察の支配下におくことができる。思想家自身の考えは、オルガンの根音となる低音のように、つねに全体を支配し、決して異質な音にかき消されたりしない。

読書について – ショーペンハウアー

これを現代の生活の中で効率的に行うにはZettelkastenがおすすめです。

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物知り(本を大量に読む)

わかりやすくショーペンハウアーが一貫して批判しているのがただの物知り。

常に本を読み続けることで自分の考えを発展する時間も余裕もなくなり、知識が単発でしか働かないただの雑学博士になると言います。

これに対して、単なる博覧強記が取り柄の場合には、全ての音色がいわば切れ端のように迷走し、基音がもはや全く聞き取れない。

読書について – ショーペンハウアー

凡人(悪書のみを読む人)

物知りより低俗なのがこの凡人。

時代によって精査された歴史上の偉人が記した古典を読まずに、金儲けのためにインフルエンサーやビジネスマンが執筆した無駄話を読むと凡人になると。

凡人は世の中に溢れており、その人たちの考えはほとんど全て同じであるため、何も価値のあるものを生み出せないのですね。

凡人の脳みそはなんと、どれもこれも似かよっていることだろう。全員、ひとつの同じ鋳型からつくられたのだろうか。同じ場面に遭遇すると、誰もかれもがまったく同じことを思いつき、違ったことを思いつく者はひとりもいない。さらに各人のさもしい魂胆が加わる。そんな連中の下らぬ無駄話を、愚かな読者が今日印刷されたというだけの理由でむさぼり読む。偉大な人物の著書は本棚に眠ったままだ。

読書について – ショーペンハウアー

読書についてのまとめ

・ショーペンハウアー最大のメッセージは本を読んでも読まなくても「自分で考える人になれ」ということ
・金儲けのための悪書に手を出さず、時代に精査された偉人の古典を読め
・本を読みすぎて自分の考えを飲み込まれるな
・本を読むなら自分の考えを多角的に判断して、発展させること
・発展させた考えと既知の事柄の間から同質性を見抜くことで真に理解したと言える


読書について【要約】 - ショーペンハウアー

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この記事を書いた人

人生の最適化を目指すために様々なライフハックを試す男 | QOLを上げる書籍やアイテム、アプリの使い方などを紹介中

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