久しぶりのキャリア系の本を読んだのでレビューします。
人脈作りについてが多くを占めているけれども、他の胡散臭い人脈づくり本と違うのは著者が世界で最も使われるビジネスSNSアプリ『Linkdine』の創業者リード・ホフマンであるということ。
ペイパルマフィアの一人であるリード・ホフマンの実際の経験談からアクションプランとして毎章末に明日やること、今週やること、今月やることが記載されておりすぐに実践できるような内容にもなっています。
スタートアップ的人生(キャリア)戦略のまとめ
1. 3つの歯車である「資産」「大志」「市場環境」
2. ABZプランニングで戦略的に人生をピボット
3. 仕事上で意味を持つ3種類の人間関係である「盟友」「弱いつながり」「フォロワー」
4. 人との繋がりが現状の打開や新たなチャンスを生み出す
スタートアップ的人生戦略とは?
人はみな起業家
会社を起こすために全ての人が生まれてきたわけではないものの、人はみな起業家として生まれついており、「自分自身の運命の手綱は自分で握りたい」、「常に創造的でありたい」という思いがDNAに組み込まれていると言います。
雇われ人として振る舞うことは元来人間の本能に反することであるとのこと。
スタートアップ的発想を取り入れる
DNAに組み込まれているからといって世界を変えるだとか、大型資金調達をする必要はなく、社内で昇進を目指す、小さなビジネスを起こす、未知の業界に飛び込む。など、どのような形でキャリア上の成功を望むにせよ、下記のようなスタートアップの戦略を取り入れる必要があります。
- 時間に追われながら判断を下す
- 絶えず適応を繰り返す
- 大躍進のチャンスを積極的に探し、生み出す
- リスクに機敏に対処する
- 難しい決断を舵取りするためのビジネス上の知恵や情報を人脈を活かして探り出す
少なくとも上述したような何らかの野心は持ち、資産、市場環境を見極めて、競争する上での強みをスタートアップのように築いていくことでその野心に沿ったキャリア上での成功を実現することが可能であると。
飛ぶ鳥を落とす勢いのスタートアップが採用する事業戦略と、順風満帆の 人生 を送る個人のキャリア戦略は、驚くほど似通っているということだ。
つまり、会社を順調に成長させる原則は、素晴らしいキャリアを築く秘訣とそれほど変わらない。
会社で言えば製品、事業能力、顧客基盤を迅速に展開することは、キャリア構築においてはスキル、人脈、市場とのつながりを素早く育てることと変わらないのである。
シリコンバレー流「永遠のベータ版」という発想
本書の内容はシリコンバレー流を身につけるための方法。
スティーブ・ジョブズはAppleを「地球上で最大のスタートアップ」と呼び、Amazonの創業者であるジェフ・ベゾスは株主への手紙の締めくくりにいまだに「今日が初日」だと書き続けます。
起業家にとって「完成した」は禁句であり、偉大なる企業は進化を怠らないことを心得ていることの表れでしょう。
企業だけでなく、誰もが未完成品であり、常に学び、行動し、人間としての幅を広げ、成長するための機会に巡り合う。
「完成した」を禁句にし、自分の人生を「永遠のベータ版」と位置付ける考え方こそがシリコンバレー流です。
自分の強みを育てる3つの歯車
3つの歯車である以下3つを育てていくことで、変化の多い時代に適応していける人材になるとのこと。
- 資産
- 大志
- 市場環境
資産
まず資産は「ハード資産」と「ソフト資産」の二つに分けられ、本書においては「ソフト資産」を高めていこうと主張しています。
ハード資産: お金、モノ
ソフト資産: スキル、人脈
また、競争上の差別化につながるソフト資産には2つの種類があると言っており、それが「稀有であること」と「資産の組み合わせ」です。
1つ目の「稀有であること」に関してはスーパーエンジニアの例が挙げられています。
彼らのようなある分野でトップ1%に入るような人材はそれだけで価値があり、例えばコミュニケーションスキルが著しく乏しかったとしても高級鳥になることがあると言われています。
ただ、この1つの分野でトップ1%になることは相当難しいので、2つ目の「資産の組み合わせ」が大体の人の競争戦略になります。
「資産の組み合わせ」に関してはよく言われる3つの分野で100人に1人のスキルを身につけると100万人に1人の人材になれるという話がありますね。
共著者であるベン・ホロウィッツがこの「資産の組み合わせ」を体現しており、『起業』『投資家』である『ノンフィクション作家』はほとんどおらず、それが彼を希少な人物にしているとのこと。
また、ジェネラリストかスペシャリストか?全く新しいスキルかすでにあるスキルを強化すべきか?についても言及していますが、全ては以下文章に要約されています。詳しく知りたい方は本書をご覧ください。
結論として、異なる分野や経験につながりを見つけ出せるくらいある分野について学び、中級レベルになることには価値がある。
そして、市場が求める何かの分野で世界級になることにも価値がある。あるスキルが別のスキルをユニークなかたちで補い、高め合うのでないかぎり、何かがまあまあ得意でもあまり価値はない。
自分に投資するなら、初級と上級のスキルや知識に投資しよう。
大志
大志は自分のスキルや市場環境など関係なく持つべきもので、将来の目標やビジョンがこれに当てはまります。
自分の場合であれば「外国人美女と幸せな家庭を築く」ということですね。
ただ、最初から望むものが全て手に入るとは限らないので、以下であるように
もし、あなたの目指すところが仕事を好きになることなら、まずすべきなのは希少で価値のあるスキルを上達させて『キャリア資本』を積み上げ、その後に、この資本を素晴らしい仕事をするために投資すること」
最初は我慢して懸命に努力し、キャリア資本(スキル、経験、人脈)を増やしていき、自分のビジョンと仕事を一致させていくことが重要とのことです。
市場環境
キャリアの目標を設定する際には、特定の業界やスキル分野を絞り込み、競争上の強みを持つ領域を見つけることが推奨されます。
ここで重要になるのが「職種」ではなく、「業界」を選択すること
と言っており、「世界最高のマーケティング幹部を目指す」ではなく、「中小のヘルスケア企業のマーケティング幹部としてピカイチになる」というように自分自身が強みを見出せる複数の分野を掛け合わせ、絞り込んだ分野を見つけ出すことが自分が何をできるかを明確に示すことにつながるとのことです。
いま熱い分野で働く。その会社で自分がこれまでに培ったスキルや、抱いている大志に近い仕事があればなんでもいいからやる。会社が成長を続けているあいだは、どんな仕事をするかはほとんど重要ではない。
ABZプランニング
スタートアップはピボット(方向転換)をするのでキャリアも同じように方向転換をしていこうとのこと。
そしてピボットするキャリアを歩んでいく上では常に3つの選択肢を持っておこうと提言しています。
3つの選択肢とは以下です。
- プランA: やってみないとわからない
- プランB: 学びながら方向転換する
- プランZ: 救命ボードに飛び乗って態勢を立て直す
プランA: やってみなければわからない
現状の選択肢のこと。
この期間では業界に踏み入れなければ決して得られないスキルや経験を得ることが重要で、次にやりたいことに備えて資産を増強し、大志をより明確にします。
自分の場合は現状、受託開発企業のPMなのでこのままPMとしてキャリアを積み上げて行くことですね。
プランB: 学びながら方向転換する
プランAを絶えず修正しつつも、大きな変更が必要になると感じる場面が出てきます。この時に移る先がプランB。
自分の場合はヨーロッパの大学院に留学してマーケティングにジョブチェンジすることですね。
ここで重要になるのが
- 試行錯誤を前提としてプランBを見つけようとするということ
- 80%で飛び出すこと
の2つ。
試行錯誤なので当然失敗が起こる可能性もありますが、全てのリソースを賭けるのではなく、一部のリソースだけを賭け、少しづつ修正したり、後戻りしたり、中止したりする。
また、一部のリソースだけを賭け、リスクヘッジをしつつも、80%ほど準備ができたらプランAからプランBに飛び出し大胆に人生の舵を切る。
変化の激しい時代においては大志を指針にし、これぐらい大胆な決断が必要です。
問題は、刺激的で豊かになりうる新しいキャリアパスを目指すとき、準備万端と思えるまで待ってしまうことだ。 準備ができたと感じるまで待ってはいけない。 人生最大かつ最高の展開に対して「準備ができている」ことなどほぼ絶対にないからだ。
プランZ: 救命ボードに飛び乗って態勢を立て直す
プランAとプランBが失敗した時の万が一のための選択肢がプランZ。
著者のリードホフマンも最初に起業した時に「実家に転がり込んで職探しをする」というプランZを作るために父親に頼んだと言います。
プランZはあくまで一時しのぎのものであるため、態勢を立て直すものと考え、このプランZがあることによって、リスクを許容して新しいことに全力投球ができるとのことです。
仕事上で意味を持つ3種類の人間関係
自分の人生に影響を及ぼす人々は以下3つのカテゴリーに分けられます。
- ビジネス上の盟友
- 弱いつながり
- フォロワー
1. 盟友
盟友には4つの特徴があり、単純な損得では考えない信頼関係のある仲間のこと。
- お互いの相談役
- 頻繁かつ熱心に支える
- 公の場で互いの長所や成果をほめる
- 2人は「友達」
この関係を作り、維持していくためには緻密なコミュニケーションと協力関係の積み重ねを通して信頼を培っていくことが重要。
2. 弱いつながり
盟友と呼べるほどでもない緩やかな関係の知り合いのこと。
1年に数回でもInstagramでいいねをつけてくれると嬉しくなる人、SNS上の投稿で読んでためになると思える人などの1次的なつながりに加えて、紹介者を通して繋がれる「3次の隔たり」で出会える人もここに含まれます。
自分を確実に紹介してもらう秘訣や紹介してもらった後に連絡するときのコツなども詳しく紹介されているのでより具体的な内容を知りたい方はぜひ本書を読んでみてください。
3. フォロワー
SNSにおけるフォロワーのこと。
著者はフォロワーのことを「不労キャリア資本」と呼び、オフラインでは常に自発的に動いて、繋がりを作る必要があるものの、SNSでは一度動き出せば、自動的に繋がりを作り、物事を進められると言います。
以下著者によるフォロワーの増やし方です。
- エッジを効かせよう
- どんどん「いいね」しよう
- 弱みをさらけ出す
- 「整いすぎた」投稿は読まれない
- 「単純接触効果」をつくれ
- 現実世界をおろそかにしない
- 一部のフォロワーを仲間や友人に変えよう
個人的にはXなどすぐに流れてしまったり、積極的なコミュニケーションが求められるSNSは苦手なのですが、最近だとThreadsが公開されたり、Blueskyが招待制を廃止し、オープン化したりと新しいSNSが盛り上がっているのでマーケティングのことなど考えすぎることなく、継続的に続けられる方法でやってみようかなと思っています。
ソーシャルメディアでフォロワーが大勢いると、それだけで仕事になるし、影響力の高い人に会えるだけでなく、自分の影響力も高まり、仕事に欠かせないコミュニティの実情を正確に把握するのに役立つ。
大金を稼ぎ、有名になることも夢じゃない。
フォロワー数が多ければ、キャリア資本を効率的に増やすことが可能だ。
有料の定期購読者の数やクリエイター・エコノミーにおける売上が増加するだけでなく、知名度の向上によって、講演をしたり本を出版する機会も増える。
ファッション業界やエンターテイメント業界といった「狭き門」の業界では、特定の企業や個人が多大な影響力を持っている。
さらによいことに、フォロワー数が多ければ多いほど、キャリア資本が自動的に増える。ツイートや投稿を積極的にしていなくても──極端な話、寝ているあいだにも──あなたの名声は拡大するのだ。
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