デジタルな世の中になるにつれ、最近PKM(個人のナレッジマネジメント)の方法論や様々なそれらを体現するツールが開発されています。
その中でも最も有名なナレッジマネジメント手法として知られるのがZettelkasten。
20世紀ドイツの社会学者ニクラス・ルーマンが研究と論文執筆のために考案したと言われている知的生産システムで、知識を繋げることにフォーカスした画期的なノート術として現在注目を集めています。
そのZettelkastenを体現する上で最も理想的なツールが今回紹介する「Obsidian」だと個人的に思っています。
Obsidianを使い始める上で最低限理解しておきたいこと、最初に決めておきたいこと、個人的な使い方などを紹介していくのでぜひ、参考にしてください。
*以下Zettelkastenの詳しい説明になるので気になる方はこちらもご覧ください。

Obsidianを使う上で理解すべき4つのポイント
1年ほどObsidianを運用してきましたが、やっと最近になって使い方を理解し始めました。
まあこれは運用する中で腹落ちしてくることなのですが、最初に頭に入れておくことに越したことはないので紹介します。
フォルダ分けしない

Obsidianの最大の特徴は「知識を繋げる」ということ。
ノートのリンクはもちろん、ノートの分け方にもフォルダやタグではなく、リンクを利用することで明確に分けることのできないノートも好きなように整理できます。
以下具体例。
ノート:「Obsidianの使い方」 → ノートをまとめたノート:「生産性」
ノート:「Obsidianの使い方」 → ノートをまとめたノート:「使っているアプリ」
こんな形で「このノートは他のフォルダにも入れたいなー」ということをリンクベースで整理することで可能になります。
こういったノートをまとめたノートのことをMoCと言います。これはデジタル情報をZettelkastenのように整理するLYTというフレームワークが提唱しているノートの種類のことで、Obsidianを運用する上では欠かせないノートになります。
新しいノートには必ず何かをリンクさせる
Zettelkastenのルールで「全てのカードは必ず他のカードとリンクさせる」というものがあります。
他のノートとリンクしていないノートはどこから辿ることもできず、後で見返すことが不可能になり、「死んだノート」となってしまうからです。
一つ一つのノートにつながりを持たせるということに慣れると普段生活している時にも、何かインプットしたり、思いついた場合、自然と自分の脳内の何かと繋ぎ合わせようという考え方になっていきます。
個人的にはこの「リンクベース」で考えることができるようになってからObsidianのノートが格段に増えた感じがします。
トップダウン方式でノートをアトミック化していく
Zettelkastenのルールで「カード1枚につき1アイデアのみ」というものがありますが、この点だけはどうしても自分の中に浸透しませんでした。
例えば読書メモを作るときは、「本の内容を一部抜粋して別のノートに書いて、その次の内容も同じようにして…」なんてやっていたらまとめる気も失せていたからです。
ただ最近は、
一旦全体の読書メモを作る → その読書メモをアトミック(最小化)に分割していく
というようなトップダウン方式でノートをアトミックにすることで、小さい情報を他の様々な情報に繋げるというZettelkastenの強みも発揮できますし、メモを取る際の負担も少しは減らすことができました。
ただ、読書メモを作るだけでもかなりの労力がかかる上に、さらにそこからワンステップ挟むとなるととても時間がかかります。(時間がかかるから学びになっているのでしょうが…)
Fleeting Notesはその日のデイリーノートにリンクさせる

ノートにする必要もないけれど、忘れてしまうにはもったいない走り書きのメモというのが日常的にするメモの大半を占めていると思います。
そういったものをZettalkastenではFleeting Notesと呼びますが、1年運用する中でこれの扱いに一番困りました。
とりあえずメモしただけ、というものが非常に多いので結局一番避けなければならない「死んだノート」が大量発生することになります。
ここで私が編み出したのが、デイリーノートに直接書くor切り出した別のノートをその日のデイリーノートにリンクさせるという手法です。
前者はなんといってもメモを取りやすいというメリットがあります。ただし、ノリに乗っている日やリスト形式で書いてしまうと縦長のノートになり、ウィークリーノートを作る際に振り返りにくいという欠点が出てきます。
後者の場合はその欠点を埋めてくれる完全な手法に思えますが、ノートを最小化する時に生じる「めんどくささ」というものがどうしても出てきます。
とりあえずはデイリーノートに走り書きメモは全て書いて、自分と同じような課題を感じ始めたら、後者の別のノートを切り出してその日のデイリーノートにリンクさせるといった手法を取ると良いと思います。
個人的なObsidianの4つの使い方
これ以降はあくまで私の個人的なObsidianの使い方になります。
絶対に守るべきことは一つもないので、参考にしたいと思うところだけ参考にして、あとはご自身に合う方法でObsidianの使い方をアレンジしていってください。
日記の運用
現在1年ほどObsidianで日記を書いています。
最近の日記のフォーマットは、Plus、Minus、Input、Memo、Reflect notesという5つの項目に分けて運用しています。

ざっくり説明すると、
- Plus、Minus: 良かったことと悪かったこと
- Input: 本や記事、動画や経験から学んだこと
- Memo: その他の全てのこと
- Reflect notes: 前日、後日、一週間前、一週間後、一ヶ月前、一ヶ月後、一年前、一年後のデイリーノートのリンク
という形。Obsidianに日記を書かなくても良いかな(Logseqとかの方が良いかも)と思っているのですが、ウィークリーノートを作る際の振り返りがかなり便利なので、今もObsidianで書き続けています。詳しくは以下の記事をご覧ください。

第二の脳: ノートを繋ぎ合わせる
一番オーソドックスな使い方です。グラフビューで見るとまるで自分の脳内を見ているかのようにノートの繋がりが可視化されます。(割と死蔵しているノートも多いですね…)

ノートをリンクさせる方法は前述したノートをまとめるノートであるMoCや日記のReflect notes、また文章中に挿入するパターンもあります。

上記の梅原大吾による「1日ひとつだけ、強くなる。」の感想ノートに「バルセロナ」、「レアル・マドリード」といった部分に水色で下線が引いてあると思いますが、これがリンクとなっており、クリックすれば、そのチームの説明を書いているノートに遷移します。
このようにプロゲーマーの思考とレアル・マドリードという世界的クラブの哲学というかなり遠く離れた分野の勝者に共通しているメンタリティを繋げることができているわけです。
こういった他の分野との繋がりを「リンク」によって見出していくことで独自のアイデアが生まれますが、その「リンク」を一番活用できているノートアプリは現時点ではObsidianだと思っています。
マインドマップ: Obsidian Canvas
Obsidian Canvasというマインドマップのように可視化してノートや情報を繋げることのできる機能が公式のプラグインとして登場しました。
私は以前マインドマップにX Mindを使っていたのですが、Obsidian Canvasが使えるようになってからはX Mindを削除。
個人的に理想としていた機能をドンピシャで当ててきた感じで、それをずっと使っているObsidianで使えるというのがものすごい。
X Mindやその他マインドマップアプリは固定された形にツリーが作られていくので、右側のツリーだけが肥大化したりと、書き込みすぎると全体を見通しにくいというのが課題としてありました。
しかし、このObsidian Canvasはあっちこっちにツリーが作れますし、ノートをそのまま繋ぐこともできると。
まあ文字だけでは伝わらないと思うのでぜひ触ってみて、他のマインドマップアプリと比べてみてください。

Kindleでハイライトした部分のダウンロード
Obsidian Kindle Pluginというプラグインをインストールすると使えるようになる機能です。
ボタン一つでKindleでハイライトした全ての文章が以下画像のように自動で作成されたページになだれこみます。

これによってかなり楽に読書メモが作れるようになると思います。
Obsidianでやらないこと
タスク管理
一応ObsidianにもDay Plannerというタスク管理に適したプラグインがありますが、一々タスクごとに時間を書かないといけなかったり、タスクを移動させる際の不便だとか色々不満点が出てきたので自分はObsidianでタスク管理することはやめました。
現在の個人的タスク管理はNotionに全てのタスクを保管し、そのタスクを毎日Logseqに引っ張り出して1日のタスクをこなしていくといった形にしております。
詳しくはまた次の記事でお伝えします。
習慣管理
習慣管理もタスク管理と同様Obsidian Trackerというプラグインがありまして、使ってみましたが、すぐに運用を停止しました。
このプラグインはタグをつけて、習慣を判断していくといったものになるので、ノートのタグと習慣のタグでごちゃついてしまい、スッキリしないのです。
また、自分は歩数や睡眠時間も習慣管理に記載しているので平均値を簡単に出せるという点でも物足りないので、習慣管理はNotionで運用することにしました。
個人的なフォルダー構成
基本的に1階層。フォルダの下に該当する全てのファイルを置いていくといった形にしております。
私のフォルダー構成は以下の10個。
- 00_MoC
- 01_Brain
- 02_Notes
- 03_Personal Reports
- 04_Projects
- 05_Words
- 06_Kindle Highlights
- 07_Rules
- 08_Templates
- 09_Public
- 10_Extra
簡単にそれぞれ説明します。
00_MoC
全てのMoCファイルを置く。
01_Brain
ZettelkastenでいうPermanent Notesと仕事と人生の原則をまとめてあるPersonal Bibleというファイルを置く。
02_Notes
ZettelkastenでいうLiterature Notesを置く。記事や動画、本を読んで自分の言葉でまとめたファイルがここに入る。
03_Personal Reports
デイリーノート(日記)やウィークリーノート、マンスリーノートに1年の振り返り、10年間のロードマップから人生の目標まで個人的な全てのファイルをここにぶち込む。
04_Projects
仕事で発生したプロジェクトの戦略や事業アイデア、将来の事業構想やブログの戦略など公私問わず仕事関係のノートがここに入る。
05_Words
あらゆる種類の語彙ノートがここに入る。例えば、リヴァプールなどのチーム名からナポレオンなどの人名、Twitterなどのサービス名からデフォルトモードネットワークのように概念の名前など、ありとあらゆる言葉の説明をしているファイルたちが集まっている。
06_Kindle Highlights
前述したKindleでハイライトした部分のダウンロードをこのフォルダに入れる。
07_Rules
ObsidianやNotionなど使用しているツールのルールを記載したファイルが入る。このフォルダ構成についても[📏Obsidian_ディレクトリ構成]というファイルを作り、ここに入れている。
08_Templates
デイリーノートやウィークリーノート、各種ノートのテンプレートがここに入る。
09_Public
ブログ記事やポートフォリオサイトなど自分が公開している情報がここに入る。
10_Extra
画像など。
Prefixのルールを決める
ノートの種類ごとにPrefix(接頭辞)を決めておくことで、フォルダ内でバラバラにならず、種類ごとにまとまってくれます。
後でぐちゃぐちゃになって、全てのノートにPrefixをつける作業は面倒なので、Obsidianを運用する前に決めておくと良いと思います。
以下、私のPrefixのルールです。
Prefix | 意味 |
---|---|
📘 | 本 |
📰 | 記事 |
📜 | 論文 |
📼 | 動画 |
🎧 | Podcast |
🗣 | Social |
🎬 | 映画 |
🦸 | マンガ |
💭 | Thoughts |
🗺️ | MoC |
👤 | 人物 |
👥 | チーム |
📄 | ブログ |
💼 | Client Work |
🗂 | Personal Project |
⚛ | Word |
📏 | Rule |
📱 | Product |
📖 | Bible |
🔲 | Method |
💡 | Business Idea |
タグのルールを決める
タグに関しては基本的に使っていません。
ただ、Obsidian dataviewプラグインを使うために、データでノートをまとめて表示したいものだけ、タグ付けしています。
ノート整理は基本的にMoCです。
まとめ: 自分に合ったObsidianの使い方を見つけよう
基本的にObsidianを使い始める前に覚えておくべきことは冒頭に説明した
- フォルダ分けしない
- 新しいノートには必ず何かをリンクさせる
- トップダウン方式でノートをアトミック化していく
の3つだけで、その他の部分は私が個人的に運用している方法になります。
使う人によって合った方法というのが必ずあるので、色々な人のマネをしてみて、修正する。ということを繰り返して、自分に合ったObsidianの使い方を見つけていただければと思います。
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