生産性オタクの人にとって習慣の死守は3度の飯より大切なことのはず。
今回紹介する「ジェームズクリアー式 複利で伸びる1つの習慣」は習慣に関する本の中では一番良くまとまっていて、網羅されていると言われており、この一冊を読み込めば習慣に関しては偏差値60以上を叩き出せるという優れた本です。
この本を読んで成長のためのルールづくりを学び、人生の軌道を上向きにしていきましょう。
最小習慣が大きな違いをもたらす
この本の原題であるAtomic HabitsのAtomicは「原子の」という意味であり、最小の習慣によって人生に劇的な変化をもたらしていくということが主題となっています。
1%の改善は目立たないし、気づかれにくいですが、長い目で見ると大きな利益をもたらします。同様に1%の改悪は気づきにくいですが、長期間では大きな損失を及ぼします。
習慣は自己改善が複利の利子を生んでいくもので、1日ではほとんど違いがないように見えても数ヶ月、1年、5年、10年単位で見ると結果がまるっきり変わるというのです。
結果とは、習慣の影響をあとから測る遅行指数のようなものであり、現在の軌道に比べればどうでもいいものであると述べられており、一番に重視すべきは現在の軌道。
以下の言葉が本書の要約であり、最大のメッセージと言えると思います。
現在の結果よりも、現在の軌道にもっと関心を持つべきだ。
ジェームズクリアー式 複利で伸びる1つの習慣
もしあなたが百万長者でも、毎月収入より多くの金を使っていたら、悪い軌道に乗っているということだ。浪費癖を変えなければ、いずれ困ったことになるだろう。
逆に、もし破産しても、毎月少しずつ貯金していれば、望んでいるよりゆっくりではあっても、経済的自由へ向けて歩んでいることになる。
習慣作りの基本
以下3つの点を意識して習慣作りを行います。
- 目標ではなく、仕組みづくりに注力
- 習慣がアイデンティティーを形成し、アイデンティティーが習慣を形成する
- きっかけ、欲求、反応、報酬の4ステップを取り入れる
目標ではなく、仕組みづくりに注力する
勝者も敗者も目標は同じ
成功者は目標を決め、それに向かって努力をしたから成功した。と言われますが、大切な部分はそれに向かって努力をしたという部分です。
でも考えてみてほしいのが、オリンピックで金メダルを取った人も、予選落ちした人も大体同じ目標を持っていたはずです。
勝者も敗者も目標が同じなら異なっていたのは努力の仕方にあったと考えられます。
目標達成は一時的、仕組みづくりは永久
部屋をきれいにするという目標を立てて、気力を奮い起こしたら、ひとまずは部屋をきれいにできます。
ただ、部屋が散らかった原因の自分の散らかし癖は治ることはないでしょう。治らなければ再び部屋をぐちゃぐちゃにするだけです。
結果を一時的に変えるのではなく、仕組み自体を変えることでしか永久に部屋のごちゃつきからおさらばすることはできません。
目標一時的、仕組み永久の図
目標には方向を定める効果がある。だが、仕組みは進歩するのに最適である。目標について考えるのに時間を費やしすぎて、仕組みを考える時間がないと、いくつかの問題が生じてくる。
ジェームズクリアー式 複利で伸びる1つの習慣
習慣による3つの行動変化
下にいくにつれて、より強固な変化となります。
- 結果の変化
成果の変化。設定した目標がこの段階にあたる。
具体例: 体重減少、本の出版、TOEICスコアアップ、選手権優勝 - プロセスの変化
習慣と仕組みの変化。身に付く習慣がこの段階にあたる。
具体例: ジムで新しいメニューを実行する、作業前に机の上を片付ける、起きたら英語ラジオを流す - アイデンティティーの変化
信念の変化。思い込み、セルフイメージがこの段階。
具体例: 私はミニマリストである、私は健康的な人である、私は英語を毎日使う人である
多くの人は何を達成したいかを意識して習慣を身につけようとしますが、これは1.の結果ベースの変化になりやすく、やや弱い変化といえます。(意志が強い人であっても目標達成後に燃え尽きてしまうケースが多い)
反対にどのような人になりたいかを意識して習慣を身につけようとすると3.のアイデンティティーベースの変化となり、半永久的にその習慣は長続きするとのこと。
自身と矛盾する行動は長続きしないと言われているようにどれだけやる気を奮い立たせようとも、過去の行動に引きこもうとする根本的な信念を変えなければ、習慣を変えるのは難しいということです。
本当の行動変化は、アイデンティティーの変化である。
ジェームズクリアー式 複利で伸びる1つの習慣
やる気があれば習慣を始められるかもしれないが、その習慣を続けられるのは、自分のアイデンティティーの一部になったときだけである。
誰でも一、二回はジムへ行ったり、健康的な食事をしようと自分に言いきかせたりすることはできるが、その行動の背後にある信念が変わらなければ、長期的な変化を続けるのは難しい。自分の人となりの一部となるまでは、その改善は一時的なものにすぎない。
シンプルな習慣作りの4ステップ
どの習慣も同じ4つのステップを踏んで形成されていきます。
きっかけ
まず、きっかけが脳に行動を起こさせます。報酬を予測させるわずかな情報によって次のステップである欲求を引き起こします。
欲求
欲求はあらゆる習慣の原動力。
ある程度の願望や動機、変化への欲求がなければ、行動する理由はありません。
テレビをつけるのも楽しみたいからであり、タバコを吸うのも落ち着きたいからです。求めているものは習慣ではなく、習慣によってもたらされる心身の満足感です。
反応
反応は実際に行う習慣のことで、思考や行動として目に見える結果として現れるもののこと。
反応が起こるかどうかはどれだけやる気になったか、またはどれだけ抵抗を感じるかによって決まります。
報酬
きっかけによって報酬に気づき、欲求によって報酬を求め、反応によって報酬を獲得する。
この一連の流れを通じて報酬がもたらされます。
1. きっかけ | 2. 欲求 | 3. 反応 | 4. 報酬 |
---|---|---|---|
スマホが鳴り、通知が届く | メッセージの内容が知りたい | スマホを取り、メッセージを読む | メッセージを読むという欲求が満たされ、メッセージを読むことがスマホが鳴ることと結びつく |
仕事に行き詰まる | 行き詰まりを晴らしたくなる | スマホを取り出しSNSをチェックする | 気分を晴らす欲求が満たされ、SNSをチェックすることが仕事に行き詰まることと結びつく |
脳は報酬探知機なので日々の生活の中でどれが自分の行動が願望を満たし、満足感を与えてくれるか常に監視し、喜びや失望などの中から心地の良い習慣だけを覚えておき、きっかけを与える習慣を探すサイクルに戻ります。
このように私たちは生きている限りこの終わりのないサイクルによって行動を決め、習慣が形成され、人生が形成されていっていると言えるでしょう。
習慣作りの方法4選
習慣作りのステップ | きっかけ | 欲求 | 反応 | 報酬 |
良い習慣の身につけ方 | はっきりさせる | 魅力的にする | 易しくする | 満足できるものにする |
新しい習慣を身につけるにはまず現在の習慣を把握する必要があります。
ただ、習慣を把握することは簡単なことではありません。もし、習慣が身についていればそれは無意識的なものであり、何も考えずに行っていることなのでそれが習慣だと認識することはできないからです。
無意識を意識しないかぎり、それはあなたの人生を支配し、あなたはそれを運命と呼ぶだろう。
カール・ユング – ジェームズクリアー式 複利で伸びる1つの習慣
なので一旦毎日行っていることをリストアップし、良い習慣と悪い習慣に分けてみると良いでしょう。
はっきりさせる
まず、はっきりさせるために前もって習慣化したいことを明文化しておきます。
例えば瞑想を習慣として取り入れたい場合、”午前7時に自分の部屋に行って10分間瞑想をする。”などです。
このように<いつ><どこで><何を>するかを明記し、行うべき行動がはっきりし、やる気に左右されることを防ぐということですね。
また、人間の行動はディドロ効果というやり終えたことに基づいて決めるという性質があるため、if-thenのルールをこれに加えることでさらに強固かつ、はっきりとしたルールにすることが可能です。
if-thenとは<現在の習慣>をしたら、<新しい習慣をする>という方式のことで、例えば、”午前7時に歯磨きを終えた後に自分の部屋に戻り、10分間瞑想をする”という形になります。
個人的にNotionでif-thenルールを作って毎日のデイリーシートで管理しているので後で紹介します。
魅力的にする
人間を動かすものは報酬の実現ではなく、報酬の予測です。
これを行うために先ほど説明したif-thenルールに加えて報酬を加えることです。
例えば、あなたがスポーツファンの場合は”午前7時に歯磨きを終えた後に自分の部屋に戻り、10分間瞑想をする” それが終わったら、”スポーツのニュースをチェックする。”
こんな形で<現在の習慣>をしたら、<必要な習慣>をし、<したい習慣>をするというようにif-then-報酬のチェーン上にして取り入れたい習慣を現在の習慣としたい習慣で挟むことで人間の本能をうまく利用します。
易しくする
人間の脳はできるだけエネルギーを保存しようとするため、努力を最小限にしようとする性質があります。
また、「もっとも効果的な学習法は計画することではなく、実行することである」の通り、習慣を形成するためにかけた時間よりも行った回数(頻度)の方が重要です。
この2点を考えるとできるだけ簡単で最小の努力で行える環境とルールを作ることが習慣形成においては重要です。
具体例としてはランニングを習慣にしたい場合、毎日朝7時に”トレーニングウェアに着替えて、外にでる”。これだけでいいんです。
めちゃくちゃやる気が起こらなくてもただ着替えて、玄関のドアを開けるだけ。結果的にここまでやったんだから走ろうと感じれば走ればいいし、それでもやる気が起こらない場合はそのまま家に入ってしまえばいい。
とにかくある習慣のために小さく始めてみるといったことが良い選択をすることにつながり、良い選択をすることができれば、1日の軌道を上向きに修正することができるのです。
満足できるものにする
人間の脳は遅れて得られる報酬よりも瞬時に得られる報酬を優先するように進化してきました。
そのため、習慣を長続きさせるにはほんの少しでいいので成功したと感じさせることが必要です。
本書で提唱しているのは習慣トラッカーを利用することです。習慣トラッカーは以下のようなチェックを入れてその日に習慣を行ったかどうかを可視化するものです。
このように可視化することで進歩がはっきり見えるようになり、満足感を得られるということです。
習慣作りに失敗しないために
潜在能力のプラトーを意識する
英語を1時間勉強しても、ジムに1ヶ月通っても結果が出ずにいつもの生活に戻ってしまうのが普通の人間です。
努力は蓄積されていき、ある一点から結果が目に見え始めます。
その結果を得て、モチベーションが上がり、続けることが苦しいと思わなくなり、当たり前になり、生活の一部になったときにはじめて大きな結果を手にすることができるのです。
最初はYea yeaしか英語を話せなかった自分も、留学してからは毎日現地の人に話しかけたり、友達と会ったり、Netflixを見まくる生活を1年続けることで、10ヶ月目ぐらいに英語を話す夢を見ることが出来ました。(英語を話す夢を見ると英語脳になれたと言われている)
思考停止でやり続けてはいけませんが、結果が出るまで時間がかかるということはデフォルトで考えておくのが良いってことですね。
もし良い習慣を身につけることや、悪い習慣を断つことに苦労しているなら、それは進歩する能力がないからではない。たいていは、「潜在能力のプラトー」をまだ超えていないせいだ。
ジェームズクリアー式 複利で伸びる1つの習慣
懸命に努力しているのに成果が出ないと愚痴をこぼしているのは、温度をマイナス三度からマイナス〇・五度に上げて角氷が解けないと文句を言っているようなものだ。
努力は無駄にはなっていない。蓄積されているだけだ。すべての変化は摂氏〇度で起こる。
ゴルディロックスの原理
ゴルディロックスの原理とは易しすぎず難しすぎない、自分の能力ギリギリの仕事をするときに人は最高のモチベーションを発揮できるというものです。
成功を阻んでいるもっとも大きな要因は失敗ではなく、退屈であり、習慣が日常化すると退屈になって満足できなくなります。
成果が出ないうちに次から次へと新しいダイエット法や副業に手を出してしまうのはこれが原因だと言えます。やる気がある時は誰でも頑張れますが、仕事が楽しくない時でも続けられる人がプロになれるのです。
作家で瞑想指導者のデビッド・ケインは、生徒たちに、「都合のいいときだけの瞑想者にならないように」と勧めている。
ジェームズクリアー式 複利で伸びる1つの習慣
同じように、都合のいいときだけのアスリートや、都合のいいときだけの作家や、都合のいいときだけの何かに、あなたはなりたくないだろう。
習慣が自分にとって本当に大切なら、どんな気分のときでも続けようとしなければならない。プロは、たとえ気分が良くなくても行動する。楽しくはないかもしれないが、繰りかえす方法を知っている。
決断日記
毎週行った大きな決断とその決断をした理由、期待している結果を記録し、月末か年末に自分の選択を振り返るという日記のこと。
人生を改善していくには習慣を身につけるだけではなく、見直しと反省によって微調整することが重要です。
個人的にこれは導入する価値があるなと思ったのでNotionで作って後ほどテンプレートを共有させていただきます。
個人的なNotionでの習慣管理システム
以下が自分で作った習慣管理システムです。
[Habit]に身につけたい習慣名を、[if]にトリガーとなる行動を、[then]に実際にする行動を記入しています。
また、[When]で毎日、毎週、毎月やることを絞り込んだり、[GTD Programs]で紐づいている大プロジェクトのリレーションを張っています。
また別の記事でNotionで作るIF-THENデータベースについては紹介するので少々お待ちください。
本記事ではこの本の要約を紹介していますが、具体例やその他省いた点が多々あるので気になる方はぜひ本書も読んでみてください。
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