中国のAI企業「DeepSeek」が開発した「DeepSeek」は、最新かつ高性能なLLM(大規模言語モデル)として業界内外で大きな注目を集めています。 DeepSeekは、他の競合AIモデルと比較して、コストパフォーマンスに優れながらも高い性能を実現している点が特徴です。
例えば、OpenAIのo1と同等の推論能力を持ちながら、API利用料金が25分の1以下という驚異的なコスト効率を誇っています。 このような特長から、多くの企業や個人ユーザーがDeepSeekをAI開発に活用し始めているのです。
今回はそんな「DeepSeek」の基本的な仕組みや特徴を解説するとともに、特に注目されている2つのモデル「DeepSeek R1」と「DeepSeek V3」の違いやメリットについて詳しくご紹介します。さらに、これらのモデルをビジネスや個人プロジェクトでどのように活用できるのか、具体的なユースケースを交えてお伝えします。
最後に、DeepSeek AIを安全かつ効果的に使うためのリスクについても触れ、個人利用する場合の注意点についても解説します。 ぜひ、この記事を通じてDeepSeek AIの可能性を知っていただき、自分のプロジェクトや仕事に役立てていただきたいです。
新興勢力「DeepSeek」とは?
中国のAI企業「DeepSeek」は、急速に成長を遂げている新興企業として注目されています。このセクションでは、設立背景や創業者の経歴、チーム構成、出資状況など、DeepSeekに関する詳細情報を掘り下げていきます。
DeepSeek社の設立背景と概要
DeepSeekは、2023年に中国・杭州で設立されたAIスタートアップです。 同社は、大規模言語モデル(LLM)の開発を専門としており、特にコストパフォーマンスの高さと高性能な推論能力を持つモデル群が注目を集めています。設立当初から、業界内外でその存在感を示しており、短期間で市場に浸透しました。
興味深い点は、DeepSeekが外部からの出資を受けず、共同創業者たちの自己資金のみで運営されていることです。この独立性により、柔軟な意思決定と独自の研究開発戦略を追求できる環境を築いています。
DeepSeek代表取締役の梁文峰氏
DeepSeekの代表取締役である梁文峰(リャン・ウェンフェン)氏は、AI分野での豊富な経験を持つ人物です。彼は2010年代から機械学習の研究を始め、2019年にはディープラーニングの訓練プラットフォーム「蛍火一号」を開発しました。 その後も、AI技術の応用分野において数多くの実績を積み重ねてきました。
また、趙永剛(Zhao Yonggang)氏も創業メンバーの一人として名を連ねています。 趙氏は元ByteDanceのAI研究者であり、DeepSeekのAIモデル開発を牽引してきた実力者です。彼の経験と技術力が、DeepSeekの高い競争力を支える重要な要素となっています。
さらに、創業チームには他にもハイレベルなエンジニアや研究者が参加しており、彼らの多様なバックグラウンドがDeepSeekの強みを形成しています。例えば、一部のメンバーは中国トップ大学(北京大、清華大、中国科学技術大など)を卒業し、その後アメリカの大学院でさらなる知識を深めた経歴を持っています。
梁文峰氏のXアカウント↓
梁文峰氏のビジョンと発言
創業者の梁文峰氏は、自身のビジョンについて次のように語っています。「AI技術は人類の未来を変える鍵です。しかし、その恩恵を享受できるのは一部の大企業や富裕層だけであってはなりません。私たちは、誰もが手軽に利用できるAIツールを提供することで、より公平で持続可能な社会を実現したいと考えています」。
また、彼は中国のAI業界における課題にも言及しており、「中国のAI技術は世界トップレベルにありますが、それをどのように社会に還元するかが重要です。そのためには、教育やインフラ整備といった分野への投資が必要不可欠です」と述べています。
現在のDeepSeek社の評価
DeepSeekは、その低コストかつ高性能なAIモデルによって、業界内外で高い評価を受けています。特に、OpenAIのo1と同等の性能を持つにもかかわらず、API利用料金が25分の1以下というコスト効率の高さは、多くの企業や個人ユーザーにとって魅力的です。
また、このとんでもなく低価格で高性能なモデルをオープンソースにすることで短期間で信頼性と支持を得ることに成功しました。
DeepSeek V3について
DeepSeek V3は、DeepSeek AIシリーズの中でも特に注目を集めるモデルです。その革新的なアーキテクチャと実用的な機能により、幅広い分野での活用が期待されています。ここでは、DeepSeek V3の技術的特徴や実用例、強みと弱みについて詳しく解説します。
DeepSeek V3の性能
DeepSeek V3は、その圧倒的な性能とコスト効率で注目を集めるモデルです。特にClaude 3.5 Sonnet やGPT-4o と同等の性能を持つことが実証されており、AI業界における新たなスタンダードとなる可能性を秘めています。
以下が主な特徴。
- 複数のベンチマークテストにおいてClaude 3.5 Sonnetを上回る結果を記録
- Claude 3.5 SonnetやGPT-4oと同レベルの性能を持ちながら、API利用料金はわずか10分の1 という驚異的な低コスト
- LiveBenchなどの第三者評価プラットフォームで、DeepSeek V3は「現在最強のオープンソースLLM」として認定
- 非推論モデルの中でも高い評価を受けており、汎用性と専門性の両方を兼ね備えたモデルとして位置づけられている
DeepSeek V3のアーキテクチャ
DeepSeek V3の最大の特徴は、Mixture-of-Experts(MoE)アーキテクチャ を採用している点です9。このアーキテクチャは、大規模なパラメータ数を持ちながらも効率的にリソースを管理できる仕組みとして知られています。
Mixture-of-Expertsとは?
Mixture-of-Expertsアーキテクチャは、複数の「専門家(Experts)」と呼ばれるサブモデルを内包し、タスクに応じて最適なサブモデルを選択して動作させる仕組みです。これにより、全パラメータを常に活性化させる必要がなく、計算コストを大幅に削減できます。
DeepSeek V3の場合、総パラメータ数は671B(6710億)という巨大な規模を持っていますが、実際に動作するのはその一部である 37B(370億)のみです。この設計により、高精度かつ高速な処理能力を実現しています。
以下3つがこのアーキテクチャーの革新的な理由です。
- スケーラビリティ : 巨大なモデルでありながら、必要なリソースを最小限に抑えることで、低コストで運用可能。
- 柔軟性 : タスクごとに最適なサブモデルを選択できるため、多様な用途に対応可能。
- エネルギー効率 : 全パラメータを動かすわけではないため、電力消費を抑えられる。
このアーキテクチャは、AIモデルの進化において重要な一歩と言えるでしょう。
DeepSeek R1について
DeepSeek R1は、DeepSeek AIシリーズの中でも「推論能力」に特化したモデルです。 ChatGPTのo1と同等の性能を持つことが実証されており、圧倒的低コストで高性能推論モデルを利用できることで注目されています。
以下が主な特徴です:
- ベンチマークテストでの優れた結果 : Codeforceベンチマークで96.3点、GPQA-diamondベンチマークで71.5点、MATH-500ベンチマークで97.3点という高いスコアを記録しており、数学的問題解決やプログラミング課題において特に優れています。
- 圧倒的なコストパフォーマンス : OpenAI o1と同等の性能を持ちながら、API利用料金はそのわずか5%という驚異的な低コストを実現しています。これにより、中小企業や個人開発者でも気軽に導入可能です。
- オープンソースとしての柔軟性 : MITライセンスで公開されており、商用利用も可能であるため、自由度の高いカスタマイズが可能です。
- 推論タスクにおける専門性 : 数学、プログラミング、科学的推論といった分野で特に高い評価を受けており、汎用性と専門性を兼ね備えたモデルとして位置づけられています。
XなどではV3よりもR1の方が騒がれていた印象がありますが、AnthropicのCEOであるDarioは「推論モデルを作ることは元のモデルさえあれば割と容易なので、R1よりV3を圧倒的低コストで実現したことがすごい」とのことを以下ブログで語っていました。(完全意訳なので気になる方は元の記事を読んでいただけると。。)
DeepSeekのChatサービスについて
DeepSeekはAPIだけでなく、ChatGPTのようなプラットフォームも利用できます。
以下ポストでも述べているようにo1並の推論モデルかつweb検索機能がついていて、それでいて無料というとんでもないサービス。
ChatGPTやClaudeと違ってProjects機能やシステムプロンプトを組み込める機能はまだありませんが、この性能で無料なんだったら、ChatGPTやClaudeに20ドル(3000円)も払う必要ないよね。というのが正直な感想。
中国からまたQwen Chatというサービスも出ておりますが、これまたとんでもない性能と機能ながら無料なので、今は基本的にここら辺の中国サービスを使うのが良いでしょう。
Qwen Chatについてはまた今度記事にします。
またこちらがDeepSeek CEO梁氏が紹介していたDeepSeekの使い方のになるので一読しておく価値ありです。
DeepSeek AIのリスクと注意点
DeepSeek AIを利用する上で最も懸念されるのが、セキュリティリスク です。特に、チャット内容や入力データの漏洩可能性が指摘されています。
DeepSeekの禁止事例
- 様々な国の企業が、ユーザーデータの漏洩リスクを理由に、DeepSeek AIの使用を従業員に禁止しています。
- 米海軍も「業務関連のタスクでの利用」を全面的に禁止しており、情報セキュリティ上の潜在的な懸念を強調しています。
- 台湾当局はDeepSeek AIの使用に関して「情報セキュリティ上の懸念」を指摘し、利用を控えるよう求めています。
- Ciscoの研究では、DeepSeek R1の透明性や倫理問題が深刻であることが報告されています。
このような事例がありますが、個人で利用する分には特に問題ないでしょう。 心配な方は自分の名前や住所、経歴などを入力しないようにだけしておけば十分です。
利用前に確認すべきポイント
以下、DeepSeek AIを安全に利用するために確認すべきポイントのリストです。
- 機密情報の入力回避
- オープンソースモデルの選択
- Amazon Bedrock経由で利用する
これらのポイントを押さえることで、リスクを抑えることができるでしょう。
まとめ
- DeepSeek社 : 2023年設立の中国AI企業。低コスト・高性能なLLMを開発し、OpenAI o1と同等の性能を実現しながらAPI料金を大幅削減。
- DeepSeek V3 : Mixture-of-Expertsアーキテクチャ採用。671Bのパラメータ中37Bのみ活性化し、高精度・高速処理を実現。Claude 3.5 SonnetやGPT-4oと同等の性能で、ブログ記事作成やデータ解析に活用可能。
- DeepSeek R1 : 推論能力に特化。数学・プログラミング課題で優れた性能を発揮。コード生成やバグ修正に最適。
- リスク : 機密情報漏洩やバイアスの懸念あり。Amazon Bedrockなど信頼性の高いプラットフォームを利用し、機密情報入力を避けることが推奨。
DeepSeek AIは低コストで高性能なモデルを提供し、AI技術の普及を加速。今後の進化が期待されています。
コストが圧倒的に安いのんで個人開発者はガンガンこのDeepSeekのAPIを使って開発していくでしょうね。 自分もCursorの拡張機能「Roo-Cline」にDeepSeekのAPIをセットして開発中です。
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